中里自然農園を訪ねて<高知三泊四日の旅>DAY1

「このごぼう美味しい!」「うん、とっても美味しいね」


客席でカレーを召し上がっていたお客様の声が、カレーを作る私の耳にも届く。そうでしょうそうでしょうとわたしはほくそ笑む。だってこれは中里さんが作ったごぼうなのだから。高知の自然の中で愛情たっぷりに育てられた野菜を、わたしはカレーに使っている。いつかこの野菜が作られている現場を訪ねたい、その想いが現実となった。




ハロウィンではしゃいだ若者たちが仮装姿で行き交う渋谷の早朝。わたしはとてもわくわくしていた。バスに乗って羽田空港へ向かう道中も、浮き足立っていたことだろう。旅には不安もつきもの。お留守番中のねこたちのこと、おなかの中の赤ちゃんのこと、やりかけの仕事などなどの懸案事項も心に留めつつ、それでもお釣りがくるくらい楽しみが勝っていた。


飛行機に乗り込み、一路高知龍馬空港へ。


遠いと思っていた高知も、空の旅ではあっという間。飛行時間は一時間半。こんなにも簡単に行けるのならば、もっと早く来ればよかったなぁ・・・なんて思ってしまうほどに近い。読みかけの本をお家に忘れると言うポカをしたわたしだけれど、ANAの機内誌には大好きな吉田修一さんの連載もあるし、なんと巻頭特集が南インド・チェンナイについてだったので、活字欲も期待以上に満たされた。




さてさて、到着ゲートを通り抜けると、中里さんの姿が!

なんと手には「まっことよう来たね〜and CURRY」とももしんの絵が書かれた紙を手にしてくださっている。なんとうれしい・・・こういう一手間をかけてくださるところに、大切にされているという思いやりを感じる。人として見習いたい。




そしてさらに突き抜けるような晴天のお出迎え。東京は雨が続いていたので、この青空はありがたい。旅の幸先の良さを感じた。





中里さんの車に乗り込み、中里自然農園さんのある中土佐町へ。途中最近できたというアグリコレットという大きな商業施設へ立ち寄る。高知産のお野菜やお土産物が一堂に介した大きく見やすい売り場に、テンションもマックス。いきなりいろんなものを買ってしまった。高知の木で作られたまな板はサイズ違いで二枚も。円形のものがかわゆくて、東京についてさっそく撮影で使用した。ポン酢大好きなわたしにふさわしいポン酢食べ比べセットも。(飲み比べないようにしなければ。)リープルという御当地飲料や、日曜市と呼ばれる高知名物の市場で人気の芋天も味わうことができた。




一時間弱、さらに車を走らせ到着したのは中土佐町、久礼大正町市場。左右にお魚や芋けんぴやらが並び、賑やかな通りである。


一番奥のお魚屋さんで食べたい魚を選び、正面のお店でお味噌汁とご飯とともに食す。選んだのはもちろん、戻りガツオのたたきと刺身、アジ、うつぼ、うるめ。旬の戻りガツオはもちもちとして、刺身の概念を刷新せざるを得ないような美味しさをわたしの舌にもたらした。これは・・・餅なの・・・?いやいや、かつおだ、と自分との対話が止まらない。カツオは醤油ではなくポン酢と生姜と一緒に食べるのが一般的だが、ここ高知ではニンニクと塩で食べるという。塩がシンプルにカツオの旨みを引き出し、そこにガツンとニンニクの芳醇な香り。翌日の口臭を気にしてしまいそうなこの食べ方も、高知ではみんながこの食べ方なので問題ないそうだ!!(後日、中里邸にて新しい食べ方を発見したので、後ほどお伝えしたい。)




高知で初めてのご馳走におなかがいっぱいになったところで、いざ中里自然農園=中里さんのご自宅へ!


道中きらきらと光を反射する海を見た。久しぶりの海だ。いや、もちろん羽田行きのバスは湾岸を通ったので、海は見ている。でも全く違うものであることは、説明せずとも誰しもがわかってくれるだろう。忙しなく働きながら、妊娠で日々変わっていく自分の体、これから訪れるであろう出産への恐怖と希望でいっぱいになっていて、心が休まっていなかったなぁ、赤ちゃんに申し訳なかったなぁと感じた。ちょっとだけ本来の自分を取り戻したような、そんな安堵感に包まれたところで車が止まった。


車を降りると、かわいい茶トラの猫がすりよってくる。この子は中里自然農園の猫社長、ちゃがまる。Instagramで時々登場しては、その愛らしい姿でみんなを魅了している。ご本ニャンにお会いできただけでも嬉しいのに、ちゃがまる社長、とてもとてもサービス精神が旺盛で、初対面の膝の上に乗ってくれるし、ふみふみしてくれるし、もう大変な接待受けてしまった。真っ白な体躯にところどころ茶色い模様をほどこしたにこまる専務も現れ、猫天国。最高か。




中里さんのお家には土間のような土足で滞在できる「かまや」がある。昔ながらの農家のおうちにはあるものなのかわからないが、畑作業の合間の休憩や昼食で靴を脱がなくてもいいように、母屋とは別棟のキッチン・ダイニングだけの空間だ。とても便利。


窓から見える田園風景と、程よく入ってくる日差しに猫たちも目を細める。ちょっとのんびり休憩をしてから、買い物へと出かけた。お麩の中にゆでたまごが挟まった食べ物や、久礼めいぶつのくれ天、お酒(わたしは飲めないけど)を購入し、おうちで晩御飯の支度。




といっても中里さんがテキパキと作ってくださったおかげで、わたしはただ座ってるだけ。目の前に次々と野菜を主役にしたおかずが登場したのであった。里芋とこんにゃくの炊いたん、にんじんとごぼうのきんぴら、四方竹と豚肉の炒め煮、人参葉のサラダ。とれたての野菜をいただける喜びをひしひしと感じた。そしていつもの自分の味付けの濃さに気づけた。ほんのりと効かせるくらいの味わいが野菜の美味しさを引き立てて、心地いいのだ。これは野菜が新鮮だからなせる技なのかもしれないが、素朴な味わいが懐かしく染み渡る。




ごはんを食べて、お風呂に入って、22時にはお布団にIN!こんなに早く寝るなんて何年ぶりだろうか。早起きもしていたし、すんなりと眠りに入っていった。

二日目に続く。