How about "alternative curry"?その4(中編)・w/たんどーる塚本シェフ&南場四呂右さん

and CURRYの目指す、オルタナティヴなカレーってどんなもの?

紐解いていくために、カレーな人たちと対談をして、

その内容を記載していきます。  


たんどーる塚本シェフ&南場四呂右さんとの対談、

中編です。

>>前編はこちら


するどい質問にわたしどきどき。

この回を読むと、ナンコツキーマが食べたくなります。(もちろん梅干し添えでね)

どうぞご覧ください。



▲左から、シャンカールノグチさん(今回対談には参加してません)、南場さん、塚本さん、わたし

南場さんの毎日カレー生活10周年記念イベントで、スペシャルプレートを4人で作りました^^



 南場さん(以下な):読者向けに聞きたいんですけど、シードを使う時、パウダーとの違いってありますか?セオリーでもいいし、独特の考えだったらもっと面白いし。どうですか?


ゆきな(以下ゆ):ホール(=シード)かパウダーか。噛んだ時の食感と、口の中に広がる香りみたいなものを想像してカレーと合うかどうかで決めています。例えば豆腐のカレーを作った時に、玉ねぎとクミンシードを1回浅めに炒めて、ペースト状にした豆腐を入れて、全部グラインドするんです。するとちょっとだけクミンが崩れて。ペーストなので歯が無くても食べられるようなカレーなんですけど笑、時々ご飯と一緒に噛んだ時にクミン感がくることで飽きさせない工夫をしています。パウダーを使うと全部押しなべてダランとなっちゃう気がして。 


な:その辺り、どうですか? 


塚本さん(以下つ):単体でも複数を合わせて使う場合もある。クミン、マスタード、あとフェンネル。 


ゆ:パウダーじゃなくてホール(=シード)を使う時はどういう時ですか? 


つ:シード使う時は、大体炒め物が多いかな。カレーにも使うか。 


な・ゆ:はははは。 


つ:南っぽいのはマスタードだよね。北っぽいのはクミン。 


ゆ:そうですね。うんうん。 


つ:あとは、マスタード、クミン、コリアンダー、フェンネル、ブラックペッパー、ホールチリをテンパリングしてオイルを作っておく。 


(テンパリングオイルが登場) 


な:おぉー! 


ゆ:あー!えっ、塩は入ってないんですか? 


つ:入ってない。


ゆ:香りだけがすごい、くる。 


な:すげー。 


つ:これを作っておけば何にでも使える。ちょっと足して。 


ゆ:テンパリング済みの物を瓶に入れとくんですね。へぇー!そのアイディアはすごい。 


な:確かに、2人のカレーを食べた感じの違いで言うと、and CURRYは「あっ、クミンが崩れた」とか「コリアンダーが崩れた」とか「アレが口に入ってきた」とかスパイスが噛んだ時に。 


ゆ:分かります? 


な:うん分かるんですよ。それは面白さの一部でもある。で、塚本さんの方は、もうね、“食材”!俺の好みが入ってきちゃうんですけど。香りは食材の完全補助で、スパイスが崩れてふわっと香るっていうのはもう過ぎていて。 


ゆ:さり気なさが(ある)。 


な:そうそう、食材を噛んで美味しい、ご飯を噛んで美味しいみたいな。楽しみ方の違いはやっぱりあるように思う。 


つ:ホールスパイスの3つ、クローブ、カルダモン、シナモンは全部取る。最初油でスターターで香りを出して全部1回取って、それを玉ねぎを炒めている30分〜1時間くらいの間横で煮出すの。 


ゆ:テンパリングしたものをまた煮出すってことですか? 


つ:うん。 


ゆ:へぇー! 


な:こうやって取るんですか?(一つずつつまんで取る動作をしながら) 


ゆ:1個ずつ?ざるで? 


つ:ざるで。煮出して、最後に加える。 


な:煮汁を? 


つ:うん。 


ゆ:ホールのまま入れないこだわりや理由は何ですか?「噛んだ時にイヤじゃん」とか。 


つ:んー、特にね、カルダモンが好きじゃない。 


な:はははは!はー、これは面白い! 


ゆ:水分を足す時に(煮汁を)一緒に入れるってことですよね。べジブロスみたい。スパイスブロスみたいな。 



―「木が入っていたのはご愛敬」

な:じゃあ(ゆきなさんは)なんで取り出さないんですか? 


ゆ:んー、私もカルダモンを噛んじゃったら「うわ!」ってなるけれど、それも含めてスパイスのことを知ってもらいたいっていう気持ちがあるんです。 


な:んー! 


ゆ:私、スパイスカレーの入り口に立った時に、「どんなスパイスがあるんだろう?」ってむちゃくちゃ気になったんです。だから「あ!これがカルダモンなのか!」みたいなのを分かってもらいたい。そりゃあでっかいシナモンや、チリとか噛んだら涙が出るようなものはよけますけど、全部は取り除かなくていいかなと。噛んだら噛んだ時に記憶に残るかなって。 


つ:1回お客さんに小声で「マスター、葉っぱが入ってたよ。」って言われた事がある。ローリエのこと。 


ゆ:あー!スパイスなのに笑。知らないとそう思っちゃいますよね。 


な:確かに。ビッグカルダモンを初めて見た時はびっくりした。なんじゃこりゃって。 


ゆ:色とか? 


な:色とか、噛んじゃった時とか。やっぱり“スパイスを取り出すか出さないか問題”はある。 


ゆ:ありますよね。 


つ:あるブログで、(自分のカレーが)絶賛されたの。ただ最後に、「木が入っていたのはご愛敬」って書かれていて。 


ゆ:それはシナモンだよ~! 


な:お客様はスパイスを知っている人と知らない人がいるけれど、店側はそのどちらか分からない。そこで、提供する側として、スパイスを理解している前提で来てほしいか、リスクはあっても理解していない人にも来てほしいかってありますか? 


ゆ:理解してから来てほしいとも、理解している人だけに来てほしいとも思わない。でも1つ思うのは、お客様と話せない環境だと取り除いた方がいいのかな。例えばカルダモンが入ってて、噛んだ時に「うわっ」って思って、そのままスパイスカレーが苦手になってしまうかもしれないじゃないですか。 


な:うんうん。 


ゆ:その時に「もし苦手だったら少し避けておいて下さい」とか「噛まずに口に入れてスパイスを感じてみて下さい」とか話ができたら最高ですよね。「これが入っていることでこういうカレーができているんですよ」っていう話をしたいんです、とっても。お客様と話せる規模でカレーを作る時は、私は入れていたい。 


な:なるほど。スパイスカレーに対して、オーバーに言うと啓蒙したがっている若手が目の前にいる笑。スパイスの幅とか、面白さとか、食事そのもの以外の楽しみ方を知ってほしくてカレーを出している人(ゆきなさん)がここに。 


ゆ:ははは!私はスパイスカレーを広めたいだけ。「スパイスカレーめっちゃ面白いからやってみてよ!」って言いたい。 


つ:作る方を広めたいの?食べる方? 


ゆ:「スパイスカレーが面白い!」ってことを伝えたいんです。その1つの手段として作っていたり、インスタグラムで発信したり。作り手として世界最強のシェフになりたいとかはないです笑。 


な:じゃあスパイスカレーの面白さを伝えた後は、作る側でも食べまくる側でも良い? 


ゆ:うんうん、両方でも良い。新しい発想をずっと形にしていきたいです。  



―たんどーるさんにオリンピックとかで、「これがジャパニーズカレーだ」って言ってほしい。 

な:では、塚本さんはどうですか?「お店に来て美味しいと思って食べてもらいたい。」これは大前提だと思うんですけど、その先とか。伝えはしないけど実は底辺にある思いとか。すごく俺が聞きたいことなんだけど笑。 


ゆ:私も聞きたい!


つ:伝えたいことってなんだろうね・・逆にどうあってほしい? 


な:たんどーるに?!これ、すごいことだよ!! 


ゆ:えー!たんどーるにどうあってほしいかわたしが言ってもいいんですか?!オーセンティックなインド料理をやっていたシェフが、和素材との組み合わせに挑戦するのってすごいことだと思うんですよね。なのでやり続けていただいて、オリンピックとかで、「これがジャパニーズカレーだ」って言ってほしい。 


な:んー、これは俺が一ファンとしてやればいいことですけど、(お客様に)“食べる体験”をしてみてほしい。口に入れて、よく噛んで、なんならお腹がホカホカするみたいなことがすごく感じられるカレーだから。和素材よりも気づかれない地味な部分を、もっと意識的に発信していったらもっと面白いじゃないかな。 


つ:ナンコツキーマは、ナンコツを存分に噛んで食べてほしいから邪魔なスパイスを取るようになった。噛んでいてカルダモンが「ガリッ」ってなったらイヤじゃない? 


な・ゆ:うんうん。 


ゆ:そういう心遣いが 


な・ゆ:ありますね! 


ゆ:たんどーるさんにこうあってほしいとか、恐れ多い笑! 


つ:ゆきなさんは自分のカレー、好き? 


ゆ:(どき)んー・・・、美味しいと思って(お客様に)出しているので、好きです。でももっと好きなカレーもあります。 


つ:俺はね、沼袋でやってる時、実はそんなに好きではなかった。 


ゆ:えぇー! 


つ:自分の好みよりお客さんの好みに合わせて、だんだん違う方に行ってしまったのかもしれない。でも、倒れてからは(*1)自分の好みに合わせようって。最近は自分のカレーがより好きになったかな。 


ゆ:へぇー!沼袋(でお店をしていた)時代と比べて、どこが一番違いますか? 


つ:油を控えるようになったとか。あと、沼袋の時は梅カレーがメインだったけど、こっちに来てからはナンコツキーマを定番においてる。ナンコツキーマがね、自分の中で一番好きだと思う。 


ゆ:うん、美味しいですもん! 


つ:で、梅を足せば梅カレーの要素も味わえるし。ナンコツキーマと梅カレーを並べた時に、毎日食べたいと思うのはナンコツキーマ。梅カレーも好きだけど時々でいいかな。 


ゆ:毎回梅を足している人がここに・・・笑。 


な:えっ?あれはだって、『カレーのすべて』という柴田書店の本で、「梅を添えて提供する」って書いてあって。そういうことなんです笑。 


ゆ:そういうことですよね! 


つ:漫画見た?一応この表紙。(『華麗なる食卓』第30巻が登場) 


ゆ:はい!見てます。これやっぱりレシピ提供されているんですか? 


つ:うん。ここに。 


ゆ:あ!ほんとだ、書いてある。これ最後にしか書いてないですよね?この本初めて読んだ時に、「たんどーるさんのカレーなのに」って思っていたら、取材協力されてた笑。すごい漫画ですよね。 


つ:49巻まであるよ。


*注釈*

(*1)塚本シェフは2012年1月に脳梗塞を発症し4か月入院。半年間のリハビリの後、後遺症は残るも復帰を果たされています。


塚本さんに「自分のカレー好き?」って聞かれた時、

わたしはドキドキしてしまいました。


好きって心から言えるカレーをお客様に提供したい、と思ってるものの、

お客様の反応を見るまではやっぱりどうしても不安で。

その揺らぎを突かれたような気がして、ドキドキしたのだと思う。

自分のカレーに向き合う姿勢、

改めて見直したいなと。


次回は後編。

お楽しみに!