How about "alternative curry"?その3(前編)・w/たんどーる塚本シェフ&南場四呂右さん

and CURRYの目指す、オルタナティヴなカレーってどんなの?

紐解いていくために、カレーな人たちと対談をして、 

その内容を記載していきます。


贅沢な事に、第三回にして、

大御所、たんどーるの塚本シェフとの対談が実現!

和魂印才をコンセプトに、新しいカレーを生み出している先駆者。

そんな大大大先輩と対談だなんて・・・

自分で対談依頼を出しておいて、

なんと大それたことをと、縮み上がっていました。


そしてそんなわたしを見かねて笑、

毎日カレー生活を10年続けている(!)南場四呂右さん(@365curry)がファシリテートしてくださることに。


たんどーるさんのカウンターに三人並んで座り、いざ対談スタート!

この布陣ですので、カレーを語りだしたら案の定止まらず・・・笑。

盛りだくさんの内容なので、小出しにオープンしていく予定です。

どうぞご覧ください。


▲右から、南場さん、塚本さん、わたし


南場(以下な):自由に話していきたいのですが、2人に共通する事とか、ただ単に私が聞きたい事とか、昔の記事を見て考えてきた項目がこれです。 

(↓資料が登場)

 ▲南場さん作の資料


ゆきな(以下ゆ):めっちゃうれしいコレ!

塚本さん(以下つ):何を見たの? 

 
な:“インド料理をめぐる冒険”とか、あるいは前回の対談(カラミちゃん編)を見て考えてきたんです。


ゆ:ありがとうございます。取り急ぎこの対談の背景をお伝えします。わたしのやりたいカレーがオルタナティヴカレーっていって、自分で勝手に呼んでいるんですけど・・。


つ:それはどういったものなの?

ゆ:インドやスリランカとか、国籍でくくられないノーボーダーな、何でもアリのカレーをオルタナティヴなカレーと思っているんです。たんどーるさんってこのオルタナティヴカレーの先駆者だと思うんです。例えばだいぶ前からカレーに梅干しを入れるとか。

つ:うんうん。

ゆ:そういう新しいカレーを作る意識や、そもそもタンドール料理とか、がっつりインド料理をやってこられたのに、オルタナティヴカレーに至った経緯とかをお伺いしたいな、一緒にお話ができたらなと思っての今日です。


ースパイスを扱う上で彼ら(インド人)の感覚は真似できない


つ:最初は、当時インド人と一緒に仕事をしていて、スパイスを扱う上で彼らの感覚は真似できないなって。彼らに勝れるものは何かなって考えた時に、「あ、身近にある和素材を使えば新たな物ができるかな」って。彼ら自身にはそういう(和素材を使う)発想はないわけじゃない?

ゆ:そうですよね。

つ:で、使い始めたのがきっかけかな。

ゆ:一番最初は何を作ったんですか?

つ:梅カレー。インドにもアチャールを使った酸味のあるカレーがあるじゃない?あのアチャールがちょっと梅干しに似てるかなって、そこから梅干しの発想が出てきたかな。

ゆ:あぁー!

つ:あと黒ゴマに関しては、しゃぶしゃぶのたれ!

ゆ:ゴマだれ?!

な:ふふふふ。

つ:あれを見て、カレーに入れたら合うんじゃないかなと思って。カシューナッツとかポピーシードみたいにペーストにしてコクを出して。あと根菜カレーに関しては、筑前煮の延長みたいな感じで。

ゆ:へぇー!

つ:ナンコツのカレーは、焼き鳥屋でつくねを食べている時にふと思って、「あ、この食感いいな!」って。

ゆ:コリコリしてる感じが。

つ:1回キーマに入れてみようと思ってやったのが始まり。だから発想に関しては、“外食”。

な・ゆ:うんうん。

つ:カレー以外の物を食べて(発想の)ネタを探す事が多かった。あと、テレビでグルメ番組見たり、本屋に行って料理コーナーで立ち読みしたり。

な・ゆ:うんうん。

つ:輸入食品屋もちょっと楽しいかな。

ゆ:楽しい!カルディとかめっちゃ楽しいですよね!私1番聞きたかった事をこの初めの段階で出しちゃうんですけど。

な:どうぞどうぞ。

ゆ:私は料理の基盤も無いし、見よう見まねで作ってアイディアを形にしているって感じなんですね。でも(塚本さんは)正統派のインド料理をやっていらっしゃって、そこからそっち(和素材カレー)に転向する時の気持ちをお伺いしたいです。 



ー和素材を使っていればずっと日本に居てもいいんだよなって

つ:うん。でも元々はカレーよりタンドールの方に傾いていた。たまにカレー作ってると、「あれ?なんでお前カレー作ってるんだ?」って言われたり。ウチ(のお店)始めた頃も「お前カレーできんの?」って思われたこともあるしね。

な・ゆ:へぇー!

つ:若い時にいろんな味を覚えるのって必要だと思うんだよね。今いくつ?

ゆ:32歳です。

つ:今一番良いじゃん!30代くらいに自分で作れなくても味を覚えるのって大事だと思うんだよ。記憶しておいて、自分の腕が上がってくればそれに近づく味を絶対作れるようになるはずだから。

ゆ:はい!確かに。

な:うんうん。後で腕が追いつくって、めっちゃ面白いですね。

ゆ:いろんな味をインプットしておいて、アウトプットする技術が上がった時に出てくるっていう。インプット大事ですよね。

な:ところで「インド人の真似はできないから和素材の物を使えば」っていう探求心や向上心。それって幼少期からずっとあったのか、ある時急に気が付いたのか・・。

つ:ある時急にだと思うよ。子どもの頃無かったと思うよ。

な:へぇえー!ある時急に・・それって、いつですか?(笑)

つ:インド料理の店で働いていた当時って、日本人は何軒か転々としているうちにだんだん行き場がなくなってくるの。今はどうか分からないけど。

な・ゆ:うんうん。

つ:インド人がいれば、本格的だなってお客さんも安心する。経営者としても人件費が安いんだよね。だから日本人を雇ってくれる所がなくなってやめてしまう人もいる。で、ある時「このまま雇ってくれる所がないんだったら自分でやるしかないな」って思って。

な:なるほど。

つ:ほんとは飯塚さん(*1)みたいに海外に行ってみたいなと思っていたんだけど、行って帰ってきて、俺どうすんだろうって。先にスポンサーがいて、ちょっと勉強するとかならいいんだろうけど。帰ってきた時にもっと貧乏になってるんじゃないかって。

ゆ:なるほど。

つ:だから日本に居ながら自分の技術を上げるにはどうしたらいいのかなって時に、和素材を使っていればずっと日本に居てもいいんだよなって。

な・ゆ:うんうん。

ゆ:日本に居てもいい理由として、それを編み出した、って事なんですね。 



 ー「コリアンダーはまとめ役だ」

な:じゃあ今度は、(ゆきなさんは)なんでカレーなのか。さっき話していたように料理の基盤もない所から、カレーに向かった経緯をお話下さい。

ゆ:はい。私元々食べるのが大好きで。で、ある時カレー屋さんで友達とご飯を食べたら、安く呑めるしご飯もたくさん食べられるし、コスパがめっちゃいいぞ!って思ったんです。ただ、女子会したくなるような可愛いお店が全然ないなって。そういうお店を探して発信していくようなFacebookページをやってみようかなと思って始めたのがきっかけです。で、スパイスカレーに出会って自分でも作ってみて、すごい楽しくなって。スパイスカレーの良い所って、ある程度の作り方のルールがあるけれど、そこから自分好みにカスタマイズしていける自由さだと思うんです。料理ができなくても技術が無かったとしても、アイディアだけで自分だけのおいしいカレーができる。もちろん技術があれば格段に美味しくなるっていうのを飯塚さん(*1)と働いてすごく分かったんですけど。

な:なるほど。スパイスカレーとの出会いが自分で(料理を)やるようになったって事ですね。

ゆ:そうです。料理イコールほぼカレーなんですけど、私の場合。

な:ふふふふふ笑。そしたらコレ(資料から話を)詰めていきますか!

ゆ:そうですね。あ!スパイス聞きたいですね。具材を選んだ後、何のスパイスを組み合わせるか。塚本さんはどうやってスパイスをチョイスしていくんですか?

つ:1種類のカレーを作るんであれば多少自分の好みでいいんだけど、何種類かのカレーを作る場合は、組み合わせを散らばした方がいいかなと思う。全部単調じゃなくて。

ゆ:なるほど。

つ:こっちのカレーはクミンを多めに、こっちはコリアンダー多めに使うとか。最近よく使うのはシード系。マスタードとクミンを使うカレーと、シナモンとクローブを使うカレーとか、あといろいろ混ぜるとか。なるだけ単調にならないように、複数料理を作る場合は多少気を遣っている。 や・ゆ:うんうん。

ゆ:俯瞰しているってことですね。

つ:ほんとはクミンがいいけど、こっちで使っているから今日はマスタードでいいやとか。

な:うんうんうん。いや、今の面白いですよ。ほんとはクミンが合うんだけど、マスタード使おうとかね。じゃあ基本的に具材と完成させた味のマッチングは、感覚ですか?

つ:そう、感覚。

ゆ:私はきっと塚本さんよりも感覚です、俯瞰していない。1回に(カレーの種類は)1、2個くらいまでなので俯瞰する必要が今の所無くて。完全に、素材に対してコレ!みたいなスパイスの決め方をしています。

な:マッチングは、1回妄想?

ゆ:妄想です。私の中で和素材を使う時って必ずクミンを入れたくなるんですよ。クミンって紫蘇っぽい香りがするんですよね。なので、和の素材との橋渡し役になってくれる気がして。和素材使う時って和の感じを際立たせたいので、割とスパイス少なくするんですよ。2、3種類にするんですけど、その時は絶対クミンが入ってる気がします。

つ:クミンってどうやって使う?シードで?

ゆ:ほぼシードですね。時々パウダーも使ったりしますが、スターターで使うことが多いです。こういう和素材の橋渡し的なスパイスって他にあると思いますか?

つ:ものによるかな。デリーの田中社長(*2)は「コリアンダーはまとめ役だ」って言ってた。

ゆ:確かに。まとめ役ですね。

な:僕も(田中社長の)ブログで読んで、それから(カレー作る時に)コリアンダー足したら超うまい!ってなって。それまでは自分で配合したらSBの方が美味しいや、赤缶使った方が美味しいやってなってたんですけど、デリーの社長(*2)のブログを読んで「あぁ!」って。  


次回へつづく


*注釈*

(*1)飯塚さん→千歳烏山でハバチャルというカレー&スパイス料理のお店を営むイケメンシェフ。

       アチャールの種類がとにかく豊富で美味。

(*2)デリーの田中社長→言わずと知れた名店の社長様。ブログでの情報発信はとても勉強になります。